生協からのお知らせ
2021年08月06日お知らせ
【新コーナー】わたしの物語ー心と心がつながる瞬間ー
ランドセルの約束
わたしは田中美帆。よどがわ市民生協の配送担当をしている。
この仕事を始めてもう2年がたった。この2年間、暑い日も寒い日も組合員さんのもとへ商品を運び続け、そうして組合員さんのお役にたてることが私の喜びでもあった。
毎週木曜日の夕方に訪れる佐々木さんのお宅では、とっても元気な姉妹が出迎えてくれる。しっかり者のお姉ちゃん『アカリちゃん』は5歳、甘えんぼの妹『リンちゃん』は2歳だ。
2年前、私が配送担当になったばかりの頃は、アカリちゃんは人見知りで、リンちゃんもまだ赤ちゃんだった。2人とお話をする機会はあまりなく、商品の受け渡しはいつもお母さんにしていた。
けれど、毎週配送に伺ううちに、最初はあいさつから、少しずつアカリちゃんがお話をしてくれるようになった。アカリちゃんにつられるように、妹のリンちゃんも玄関まで出てきてくれるようになり、気が付くと姉妹そろって出迎えてくれるようになっていた。
会うたびにアカリちゃんは、歌やダンスを披露してくれたり、幼稚園であったことを話して聞かせてくれた。おもちゃを見せてくれることもあった。
2人とも、自分で選んだお菓子が届くのを心待ちにしていて、「はい、どうぞ!」と手渡すといつも大はしゃぎだった。その姿を見ると私まで嬉しくなった。
1日中配送をしてクタクタになっていても、2人の笑顔を見ると元気が出た。
いよいよ来年から小学生になるアカリちゃんとは、ある約束をしていた。
「ランドセル買ったら見せてな!」
何色のランドセルを見せてくれるんだろう、と密かに楽しみにしていた。
けれど、その年の夏、私は自分のコースを新人に引き継ぐことが決まった。
約束は後輩に託すことになった。
「お姉ちゃん、もうすぐ他のコースに行くことになってん。やから、ここにはもう来れなくなるねん」
そう伝えると、2人はえんえんと泣き出してしまった。その姿を見ていると、私の胸も寂しさでいっぱいになった。
数週間後、引き継ぎ前の最後の配送に行くと、2人は私にお手紙をくれた。
そこには「みほちゃん ありがとう だいすき」と書かれていた。
コースが変わることになって、たくさんの組合員さんから「がんばってね!」と激励の言葉をもらった。アカリちゃんとリンちゃんのようにお手紙をくれた人もいた。
組合員さんのお役に立っているつもりで、むしろ私の方がたくさん支えてもらっていることに気が付いた。
2年間、毎週配送に伺って組合員さんと交わした言葉の数々は、私の宝物だ。今のコースを離れてしまうのはやっぱり寂しいけれど、いつまでも振り返ってはいられない。
たくさんの「がんばって!」「ありがとう!」の言葉を胸に、私は今日も組合員さんのもとへ笑顔と商品をお届けする。
「こんにちは!よどがわ市民生協です!」
※このお話は、よどがわ市民生協と関わる人々のエピソードを基にしています。
物語に登場する人物の名前は仮名の場合がございます。